【2021年4月1日施行】高年齢者雇用安定法改正内容を知る

  • 2021年5月10日
  • 未分類

今年2021年の4月1日から昨年3月に改正された「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」(高年齢者雇用安定法)が実施されます。

今回の改正では、70歳までの就業機会確保措置や、創業支援措置を講ずること等が努力義務として規定されました。

高齢者の働き方の選択肢が増えるとともに、その実施にはいくつかの留意点があります。今後の高齢者の働き方を考える上で、しっかりと確認しておきましょう。

 

1.高年齢者雇用安定法の概要と改正の背景

企業はかつて、1970年代まで55歳定年制が主流でした。

その後、1970年代半ば以降高年齢者の雇用確保の観点から政府が定年延長政策を進め、その政策の一環として1971年に「中高年者等の雇用の促進に関する特別措置法」が制定されて以降、少子高齢化など時代の変化に合わせ、改正を重ねて今日の法律の名称と至っています。

 

直近の2012年改正以降は、60歳未満の定年禁止と、65歳までの雇用確保措置が設けられており、当該労働者を60歳まで雇用していた事業主に対し、

  1. 65歳までの定年引き上げ
  2. 定年制の廃止
  3. 65 歳までの希望者全員に対する雇用継続制度(再雇用制度・勤務延長制度等)の導入

のいずれかの措置を講じるように義務付けました。

 

今回の改正では、「少子高齢化が急速に進展し人口が減少する中で、経済社会の活力を維持するため、働く意欲がある高年齢者がその能力を十分に発揮できるよう、高年齢者が活躍できる環境の整備を図ること」を目的として行われました。

その中でも注目すべき点は、これまでの65歳までの雇用確保義務に加えて、65歳から70歳までの就業機会確保のため、選択的措置を講ずる努力義務を定めたことです。以下で詳しい改正内容を見ていきましょう。

 

2.改正点

今回の改正の対象となる事業主は、

  • 定年を65歳以上70歳未満に定めている事業主
  • 65歳までの継続雇用制度を導入している事業主

とされ、上記に当てはまる事業主は以下の1~5のいずれかの措置を講ずる努力義務が設けられています。

1.70歳までの定年引上げ

2.定年制の廃止

3.70歳までの継続雇用制度

4.高年齢者が希望するときは、70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入

5.高年齢者が希望するときは、70歳まで継続的に以下の事業に従事できる制度の導入

5-1.事業主が自ら実施する社会貢献事業

5-2.事業主が委託、出資(資金提供)等する団体が行う社会貢献事業

 

これらを高年齢者就業確保措置と呼び、4・5の措置は雇用によらない措置として、創業支援等措置が設けられています。

 

創業支援等措置に記載されている「社会貢献事業」とは、「不特定かつ多数の者の利益に資することを目的とした事業」とされています。

どの事業が社会貢献事業に該当するかは個別の判断に任されていますが、以下の事業は該当しないものとして例示されています。

  • 特定の宗教の教義を広め、儀式行事を行い、信者を教化育成することを目的とする事業
  • 特定の公職の候補者や公職にある者、政党を推薦・支持・反対することを目的とする事業

 

 

3.実施の際の注意点

今回の改正で定められた高年齢者就業確保措置を実施する際には、いくつかの注意点が厚労省の指針として挙げられています。

今回は大きな注意点として2点ほど上げますが、実施する措置によって異なる対応をしなければならないものもあるためそれぞれ確認しておきましょう。

 

・いずれの措置を取るか労使間で十分に協議すること

1~5のいずれの措置を取るべきかは労使間で十分に協議を行い、事業所ごとの高年齢者のニーズに合わせて決定すべきとしています。

また、今回の措置は複数実施することにより、70歳までの就業機会を確保することも可能となっており、個々の高年齢者にいずれの措置を適用するかについては、本人の希望を聴取し、これを十分に尊重して決定しましょう。

 

高年齢者就業確保措置は努力義務のため、対象者を限定して基準を設けることも可能となっていますが、その内容は、「過半数労働組合等の同意を得ることが望ましい」とされ、事業主が故意に高年齢者を排除しようとするなど法の趣旨や、他の労働関係法令・公序良俗に反するものは認められないとされています。

例えば、「会社が認めた者」や「上司の推薦がある者」といった曖昧で主観的な基準や、「男性に限る」といった男女差別に当たる基準は、労働組合との合意があったとしても、認められません。

 

・創業支援等措置を取る際には、所定の手続きをとる必要があること

高年齢者就業確保措置の中でも、4・5の創業支援等措置をとる場合、指針で定められた以下の手続きを行う必要があります。

 

<創業支援等措置>

4.高年齢者が希望するときは、70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入

5.高年齢者が希望するときは、70歳まで継続的に以下の事業に従事できる制度の導入

5-1.事業主が自ら実施する社会貢献事業

5-2.事業主が委託、出資(資金提供)等する団体が行う社会貢献事業

 

<手続きの流れ>
  • 計画を作成

以下の記載事項が必要となります。

① 高年齢者就業確保措置のうち、創業支援等措置を講ずる理由

② 高年齢者が従事する業務の内容に関する事項

③ 高年齢者に支払う金銭に関する事項

④ 契約を締結する頻度に関する事項

⑤ 契約に係る納品に関する事項

⑥ 契約の変更に関する事項

⑦ 契約の終了に関する事項(契約の解除事由を含む)

⑧ 諸経費の取扱いに関する事項

⑨ 安全および衛生に関する事項

⑩ 災害補償および業務外の傷病扶助に関する事項

⑪ 社会貢献事業を実施する法人その他の団体に関する事項

⑫ ①~⑪のほか、創業支援等措置の対象となる労働者の全てに適用される事項

※⑪および⑫は該当がある場合に記載する必要があります。

 

  • 過半数労働組合等の同意を得る
  • 計画を周知

周知の方法は見やすい場所に掲示することや、書面の交付、電子機器で常時確認できる状態にすることが挙げられています。

 

その他の注意点としては、個別に業務委託契約を締結する際には、書面にて行うとともに、計画記載事項、創業支援等措置をとることの理由をしっかりと説明すること、安全確保労働者からの相談に十分対応すべきことが示されています。

 

4.まとめ

今回の改正では、65歳から70歳までの就業確保措置を努力義務として留めていますが、今後少子高齢化とそれに伴う労働人口の減少がますます進むにつれ、これらの規定はいずれ「義務」となっていくと考えられます。

65歳以上の社員の活躍も大いに期待されるところですが、「なんとなく雇い続ける」というようなことがあっては人件費の圧迫につながったり、社内の世代交代がなかなか進まない、マネジメントがしづらい、健康不安がある社員がいても雇い続けなければいけない規程になっている、など様々な問題が生じる可能性があります。

今回施行された改正法を機に、自社の全年齢層が生き生きと働くことができるように、高年齢者の働き方、働く環境を整備していくことが重要です。