パワハラも防止対策義務化へ。重要性を増すハラスメント対策、どうする!?

2019年5月29日に、第198回通常国会で企業にパワーハラスメント(以下パワハラ)対策を義務づける改正法が成立しました。
セクシャルハラスメント(以下セクハラ)、マタニティハラスメント(以下マタハラ)の対策は既に義務化されていますので対応されている企業も多いと思いますが、今後はそこにパワハラも加えて各種ハラスメント対策を検討・運用していく必要があります。

 

今回の法改正のポイント

改正労働施策総合推進法抜粋

第三十条の二

事業主は、職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものによりその雇用する労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。

2事業主は、労働者が前項の相談を行つたこと又は事業主による当該相談への対応に協力した際に事実を述べたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。

3厚生労働大臣は、前二項の規定に基づき事業主が講ずべき措置等に関して、その適切かつ有効な実施を図るために必要な指針を定めるものとする。

第三十条の三

国は、労働者の就業環境を害する前条第一項に規定する言動を行つてはならないことその他当該言動に起因する問題(以下この条において「優越的言動問題」という。)に対する事業主その他国民一般の関心と理解を深めるため、広報活動、啓発活動その他の措置を講ずるように努めなければならない。

2事業主は、優越的言動問題に対するその雇用する労働者の関心と理解を深めるとともに、当該労働者が他の労働者に対する言動に必要な注意を払うよう、研修の実施その他の必要な配慮をするほか、国の講ずる前項の措置に協力するように努めなければならない。

3事業主(その者が法人である場合にあっては、その役員)は、自らも、優越的言動問題に対する関心と理解を深め、労働者に対する言動に必要な注意を払うように努めなければならない。

4労働者は、優越的言動問題に対する関心と理解を深め、他の労働者に対する言動に必要な注意を払うとともに、事業主の講ずる前条第一項の措置に協力するように努めなければならない。

※実際の条文はコチラ → https://www.mhlw.go.jp/content/000486035.pdf

 

対策をどうするかの詳細は今後の指針待ちではありますが、現段階で押さえておかなくてはならないポイントは以下の通りです。
1)職場のパワハラ防止のために、雇用管理上必要な措置を講じることが事業主の義務になります。
2)事業主が講ずべき措置の具体的内容等については、セクハラやマタハラと同様下記が想定されています。
・事業主によるパワハラ防止の社内方針の明確化と周知・啓発・苦情などに対する相談体制の整備
・被害を受けた労働者へのケアや再発防止
3)大企業は2020年4月、中小企業は2022年4月より施行の見通しです。

 

各種ハラスメントの定義

「うちの会社ではそんなことは発生していない」と思っていても、日頃あまり気にしていない行為がハラスメントに該当する可能性もあります。きちんと定義を確認し、「ダメな行為」について理解することが重要です。

 

パワハラ

同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務上の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える、または職場環境を悪化させる行為。

こんなことはないかCheck

□ 身体的に暴力を振るったり、強く小突いたりする
□ 他の社員が見ている前であえて怒鳴りつける
□ 必要なコミュニケーションを避けたり、孤立させる
□ 貢献や業績を無視したり、過小評価する
□ その人の能力から考えて極端に単純な仕事を与える

 

セクハラ

  1. 職務上の地位を利用して性的な関係を強要し、それを拒否した人に対し減給、降格などの不利益を負わせる行為。
  2. 性的な関係は要求しないものの、職場内での性的な言動により働く人たちを不快にさせ、職場環境を損なう行為。

こんなことはないかCheck

□ 人事考課や賞与などを条件に性的な関係を求める
□  「彼氏はいないのか」「彼女はいないのか」などと執拗に聞く
□ 酒の席で酌を強要する
□ 気に入っている異性を仕事上で優遇する
□ 不必要にボディタッチをする

 

マタハラ

妊娠・出産・育児休業や介護休業などを理由として、解雇や非正規社員への転換、降格や就業環境を害するような不利益取扱う行為。

こんなことはないかCheck

□ 妊婦健診のため、仕事を休んだ社員に対し人事考課において不利な評価をつける
□ 妊娠をきっかけに正社員からパートへ雇用形態変更を強制する
□ 育児休業の取得を理由に契約更新を実施しない
□ 育児短時間勤務をしている社員に対し「あなたが早く帰るせいでまわりが迷惑している」 などと言う
□ 男性労働者の育児休業の申し出に対し「男のくせに育休とるなんてあり得ない」と言う

 

ハラスメントが及ぼす影響

ハラスメントが発生した場合、次の表のような影響があります。

被害者に与える影響 ◆ 士気の低下
◆ パフォーマンスの悪化
◆ メンタル不調:うつ病、パニック障害、PTSD等
加害者への影響 ◇ 懲戒処分
◇ 法的責任:刑事罰、名誉棄損、人格権侵害等
企業が被る影響 ◆ 問題解決に至るまでの時間・労力・コスト(損害賠償も)
◆ 職場風土の悪化(業績低迷、人材流出等)
◆ 法的責任:職場環境配慮義務違反
◆ 社名公表、企業のイメージダウン、信頼失墜

 

ハラスメント対策、何をすべき?

様々悪影響を及ぼすハラスメントの発生リスクを抑えるために、まずは法律上の義務でもあります以下のような対応を実施しましょう。

  1. 事業主の方針の明確化及びその周知・啓発
    ・何がハラスメントにあたるのかの明確化
    ・ハラスメント行為は許されない旨の規程等への明記
    ・発生した場合の処罰の明記(懲戒等)
  2. 相談(苦情を含む)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
    ・ハラスメントの相談窓口の設置
    ・相談できる環境があることの社内周知
  3. 職場におけるハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応(対応方法を決める)
    ・事実に基づいた行為者への処分
    ・再発防止措置
  4. プライバシー保護や不利益な取扱いを行ってはならない旨の、周知・啓発
    ・速やかで公正な事実確認
    ・プライバシーの保護や申し出によって不利益取り扱いはない旨の規程等への明記

 

体制や規程上の整備だけではなく、よりハラスメント防止を徹底するために以下のような対応も検討しましょう。

管理職研修の実施

パワハラはもちろんのこと、セクハラやマタハラなども多くは上司の理解不足などが原因になることがあります。

また、管理職側も理解不足のままでは何がハラスメントにあたるのかわからず心配で積極的な部下指導ができないという事態も生じますので、全社への周知はもちろんですが特に管理職への周知徹底が防止には必要です。

社内マニュアルの整備

規程だけはカバーできていない部分、例えばいざ相談が来た場合にどのようにヒアリングするのか、ヒアリング結果はどの範囲まで共有していいのかなど、対応者が迷わず対応できるようにしておくことが迅速な対応や再発防止に有効です。

 

最後に

ここ最近、当社にもハラスメントのご相談は急増しています。
「急に従業員が来なくなったと思ったら上司のパワハラのせいだと言っている」「妊娠した社員の業務負荷を軽くしようと思ったらマタハラではないかと言われた」など、さまざまです。

ハラスメントは行為のセーフ・アウトの線引きが明確でない部分も多く、いざ発生してから対応を考えたのでは迅速な対応ができず被害が拡大したり、会社側が不利になる場合もあります。

まだしっかりとしたハラスメント対策がとれてない・・・という企業は発生してしまう前に、パワハラ防止義務化の対応とあわせて速やかに検討を進めましょう!

当社では規程の整備やハラスメント対策研修、相談窓口の設置などのご相談も承りますのでお気軽にご連絡ください。