意外と深くて難しい…扶養手続きのあれこれ

社会保険手続きを行う中で特に手間がかかり、複雑なものの一つに「扶養認定の手続き」がございます。

入社や、従業員やそのご家族のライフイベントのタイミングで多く発生するものですが、状況によって手続きに必要なものが異なることが多く、場合分けが難しいものでございます。

今回は基本的には扶養の認定条件から、これまであった複雑なケースについて見ていきたいと思います。

(2018年8月15日 追記更新)

 

そもそもの扶養認定の条件

まずは基本的な扶養認定の条件を確認していきたいと思います。

被扶養者に該当する条件は、被保険者により主として生計を維持されていること、及び次のいずれにも該当した場合です。

(1)収入要件

年間収入130万円未満(60歳以上又は障害をお持ちの方の場合は、年間収入※180万円未満)かつ

  • 同居の場合 収入が扶養者(被保険者)の収入の半分未満(*)
  • 別居の場合 収入が扶養者(被保険者)からの仕送り額未満

※年間収入とは、過去における収入のことではなく、被扶養者に該当する時点及び認定された日以降の年間の見込み収入額のことをいいます。
(給与所得等の収入がある場合、月額108,333円以下。雇用保険等の受給者の場合、日額3,611円以下であること。)
また、被扶養者の収入には、雇用保険の失業等給付、公的年金、健康保険の傷病手当金や出産手当金も含まれますので、ご注意願います。

(*)収入が扶養者(被保険者)の収入の半分以上の場合であっても、扶養者(被保険者)の年間収入を上回らないときで、日本年金機構がその世帯の生計の状況を総合的に勘案して、扶養者(被保険者)がその世帯の生計維持の中心的役割を果たしていると認めるときは被扶養者となることがあります。

(2)同一世帯の条件

配偶者、直系尊属、子、孫、兄弟姉妹以外の3親等内の親族は同一世帯でなければなりません。

 

引用:日本年金機構 健康保険(協会けんぽ)の扶養にするときの手続き

 

上記を踏まえて、イレギュラなケースやこれまでに実際にあったケースをご紹介してまいります。

 

夫婦共働きの場合の子どもの扶養認定

夫婦が二人とも働いている場合、いわゆる「共働き」の場合においては、「夫婦共同扶養の場合における被扶養者の認定について」という通達が出ており、その内容に準拠して取り扱いがなされます。(昭和60年6月13日 保険発第66号・庁保険発第22号)

◯被扶養者となる人は、その人数にかかわらず、年間収入の多い方の被扶養者とする。
◯夫婦それぞれの年間収入が同程度である場合には、届出により、主として生計を維持する方の被扶養者とする。
◯夫婦の双方またはいずれか一方が共済組合員(国家公務員共済、地方公務員共済、私学共済)である場合には、扶養手当が支給されている人の被扶養者として差し支えない。

以上の三つのルールに基づいて、扶養の判断をします。

 

産休育休中の子どもの扶養認定

夫婦共働きで子どもが妻の扶養に入っていて、新たに第二子の出産の為、産前産後休業・育児休業を開始すると、妻の収入はゼロになります。

産前産後休業・育児休業を取得したことによって収入がなくなると、当初の扶養認定の際に申告した夫婦の収入が逆転する場合がありますが、このときの取り扱いは各健保組合によって異なりますので注意が必要です。

一般的にこのときの生計維持関係については、育児休業を取得しなかったものとして取り扱うため、扶養認定を変更する必要はありません。

 

ただし、健保によっては産休・育休期間の収入がゼロであることから、第一子の扶養を夫の方へ変更する、いわゆる扶養替えを実施するよう指導する健保組合もございます。私が担当するクライアントでもこの事例がございました。

その際は、妻の加入する健保組合が「第一子を夫の扶養に移し、第二子も夫の扶養に入れるように」という判断をしたため、書類の提出ののち、妻・夫が加入するそれぞれの健保組合同士が直接やり取りをして事実確認を実施し、扶養替えが行われました。

その後妻が育休から復帰し、収入が元に戻ったところで、妻の扶養に戻す手続きを実施しました。

 

配偶者なしの場合の子どもの扶養認定

従業員に配偶者がおらず子どもを扶養に入れるという場合、そのまま特別な添付書類もなく認定されるケースがほとんどですが、詳細な要件を確認されるケースもありますので、十分に注意が必要です。

中でも、女性が入社し子どもの扶養手続きをする場合に、元配偶者からの養育費等の送金の証明書類、住民票の写し(原本)、現況書への記載等、書類の準備に時間がかかるケースが実際にありました。(マイナンバーに対応していない健保ですと、この傾向が強い印象があります)

 

家族が海外在住の場合の扶養認定

外国籍従業員が、母国にいる家族を扶養家族にしたい場合も、認定要件を満たせば健康保険の扶養に入れることは可能です。

日本の健康保険(ここでは、中小企業などが加入する旧政府管掌、現在は移管先の協会けんぽが運営する健康保険のことを指します)では、被保険者である従業員が扶養する一定の親族に対しても、扶養家族として健康保険を適用しています。被保険者が外国籍の方であっても、扶養する親族が海外にいる外国籍の方であっても、健康保険法で決められている扶養親族の条件に該当し、正式に認定されれば、被扶養者として被保険者の健康保険に入ることができます。

一番最初に確認をした被扶養者の要件に当てはまることを前提として、まずは従業員が海外の親等の親族に送金を行っている事実が確認できることが必要です。

また、外国籍の方は苗字が異なるケースがあうため、外国籍従業員本人の母国で発行される、本人と親族との続柄がわかる証明書(日本の戸籍にあたるものや、結婚証明書・出生証明書等)で親族関係を確認できることも必要です。(被保険者である従業員と扶養にいれる方の苗字が同じであれば必要ないケースもあります。)

年金事務所リーフレット(海外にお住まいのご家族について 扶養認定を受ける場合は次の手続が必要です)

ただし、海外で日本の保険証を使用することはできませんので、来日した際の医療費や、海外療養費を申請するという方法をとることとなります。

 

 

扶養の手続きは奥が深くて複雑な為、時と場合によって必要な添付書類や情報が異なる場合がございます。また、健保組合によっても認定要件が異なるため、少しでも不安がある場合にはすぐに健保組合に相談することをお勧めいたします。

今後も引き続き更新してまいります。